第67話 発熱

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第67話 発熱

 家に帰ると、海斗も陸も驚いた顔をした。 「ごめん、体調悪くなっちゃって帰ってきたの。部屋で休むね」  何も説明する気になれなくて、芽生は部屋に閉じこもった。布団にもぐりこむと、あっという間に睡魔が襲ってくる。昨日の夜眠れなかったのを取り戻そうと、深い眠りを身体中が欲していた。  夕方までしっかりと寝てしまって、起きると芽生は携帯電話を確認する。もしかして涼音から、やっぱり帰って来いと連絡が来ているかと思いきや、そんなのは来ていなかった。 「もう、どうしてこう……」  芽生が携帯を握りしめながら、涙をこらえていると、コンコンと小さく部屋がノックされた。 「はい」 「芽生ちゃん、大丈夫?」  陸が心配そうな顔をしてちょこんと顔をのぞかせた。 「陸……うん、大丈夫だよ。心配かけてごめんね」 「お熱ある? スポーツドリンク持ってきたの。あと、葛湯あるけど、食べる?」  心配そうにする陸に、芽生は大丈夫と微笑んだ。 「ありがとう。どっちも欲しい」  陸は笑顔でスポーツドリンクを持ってくると、一度キッチンへと戻って葛湯を作ると、部屋まで運んできてくれた。 「芽生ちゃん、僕があーんしてあげようか?」 「やだ陸、私、熱出てないよ?」  陸は一瞬目を細めると、芽生のおでこに手を当てた。そして、ベッドへそのまま押し倒す。 「芽生ちゃん、こんなに熱あって汗かいてるのに? だめだよ今日はバイト行っちゃ。有紀君に言っておくから」 「え、うそ、熱?」  陸の手が芽生の首筋に触れると、その冷たさに芽生は驚いた。陸が「ね、熱でしょ?」と口をとがらせて、芽生をじっと見つめた。 「パジャマとあったかいタオル持ってきてあげるから、身体拭いてね」  熱だと言われた瞬間に、体中が鉛のように重たくなる。自覚していなければ大丈夫だったのに、言われてしまったらもう熱だと身体が認識してしまった。動けないでいると、しばらくして陸が新しいパジャマを持って来てくれて、蒸しタオルまで用意した。 「お背中拭いてあげようか?」 「自分でできるよ」  とは言ったものの、身体が思うように動かず、四苦八苦して背中を拭いた芽生は久々に出た熱で身体が言うことを聞かなくて、着替えてベッドにもぐりこんだ。 「もう少し寝ててね。お夕飯はお粥がいいよね?」 「うん。陸、ごめんね」 「いいのいいの。芽生ちゃんはいつも頑張っているんだから、たまにはゆっくりしてね」  陸が頭を撫でてくれると気持ちよくて、芽生は目をつぶると一気に睡魔が襲ってきた。まどろんでいると、陸が芽生の手をぎゅっと握った。それがまるで合図となったかのように、芽生は熱にうなされながら深い眠りについた。
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