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わかっていた出来事
一年続いたある日の事だった。
「 ただいまー 」
いつもと同じで、電気がつき、美味しそうなご飯も用意されているが、ララちゃんの姿がなかった……。
「 ララちゃん? 」
私は、必死にララちゃんを部屋中探しまわった。けれど、どこにもその姿と笑顔が消えてしまっていた。
私は、レトロ部屋へ行き、電池が切れてしまったかのように、ペタリと座ってしまう。
ふと横の壁を見てみたら、一枚のポスターを見つけた。
「 あれ? 」
そのポスターは、私が必死に探しまわっても
大金を出したとしても、絶対に買うことのできない。
ララちゃんの非売品のレアポスターだった……。
「 ……ララちゃん 」
私は、ララちゃんの名前を呼び続け、子供みたいに泣いてしまっていた。
今まで一緒に過ごしてきた時間が走馬灯のように頭の中へと流れていく。
一緒に行った場所。一緒に食べたもの。
全てが愛おしくて、貴重な時間だった。
「 こんなに突然なの。別れって……。ありがとうって言いたかったよ 」
私の涙は、止まることはなかった。
私は泣きながら、大きめの付箋を取り出した。
『 ララちゃん、ありがとう。幸せでした♡』
と付箋に書き、ポスターへと貼った。
ララちゃんにもらった幸せは、一生忘れる事は絶対にないよ。幸せをたくさん私にくれて本当にありがとう。
そして、気づいてしまった。ララちゃんのポスターが、お揃いのパジャマを着ていた事に。
「 あれ?やっぱり、夢じゃなかった…… 」
ララちゃんと私の時間は、現実に起きていたんだ。夢のような現実だった。全てがちゃんと起きていた事だった。
ポスターのララちゃんが、お揃いのパジャマを着ていた事に、感動してしまい、涙がますます止まらなくなってしまった。
いなくなってしまった事が悲しいわけじゃない。いつかは、いなくなってしまうのは、頭の中でわかっていた事だから。一緒に幸せな時間を過ごせなくなってしまった事がせつなくて、たまらなかった。
ずっと泣いたまま、お揃いのパジャマを抱きながら、私は眠ってしまっていた。
別れが突然だったとしても、次の朝は普通にやってくる。
泣きすぎてしまった私は、目がパンパンに腫れてしまっている。
「 なにこの目…… 」
朝になり、目を覚ました私は、普通に会社へと行かなければならない。
顔を洗って、メイクをし、静かな部屋に鍵をしっかりかけて、会社へと向かった。
そして、信号待ちをしていた私は、ララちゃんそっくりな子を見つけてしまった。
「 ララちゃんだ 」
追いかけてみたが、すぐいなくなってしまっていた。
私とレトロなララちゃんの二人の生活は、誰にも言わず、一生のひみつにしておこうと私は、ララちゃんのポスターに誓っていた。
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