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大親友
「 すみませーん、どちらさんですか? 」
私は、警戒心ありありな感じでゆっくりと近づいていく。玄関にあったホウキを持って近づいていく。
そして部屋にいた、その子は、私の方をゆっくりと見る。
「 あ!!ララちゃん!」
その子は、私の憧れのレトロなララ人形のララちゃん!だった。
私の想いが強すぎてるせいか、私はとうとう幻覚のララちゃんまでも見えてしまったようだ。
私はララちゃんに駆け寄り、少し触ってみた。あれ……?嘘でしょ!?
さ、触れる!?
「 あのぉ、ララちゃん?ですよね 」
「 はい……あなたは? 」
「 私は、なつきと言います!ララちゃんに会えて、光栄でっす! 」
そう、その子は、私がテレビを見てビリビリとしびれてしまった人形のララちゃんだった。
私は、ララちゃんに会えた事が嬉しすぎたせいか、どうして、私の家にいるのかも、どこから来たのかも、全然気にならなかった。
そして、これから、私とララちゃんの奇妙な生活が始まってしまった……。
私はただただ、ララちゃんが家にいる事が嬉しくて、早く家に帰りたくてたまらなくなっていった。仕事も全然身に入らなくなってしまい、終始ぼーっとしている状態だった。
「 ただいまー 」
「 おかえりなさい 」
「 か、可愛い!ララちゃん、エプロン姿、たまりませんなー 」
ララちゃんを見守る私の姿は、本当に男の人に近い感覚なのかもしれない。
私は、仕事から帰ると、料理など全く出来ないため、いつもコンビニご飯とオヤジくさいおつまみ。そして、ビール!の毎日を繰り返していた為か、ララちゃんどの甘い生活が嬉しくて嬉しくて、たまらなかった。
ーーそして週末になると
「 ララちゃんが、私の服を着てる!やっぱり、可愛い 」
私は、ララちゃんを今の時代の街へと連れ出していた。
水族館や映画館も行き、まるでデートしているかのような、週末を過ごしてしまっていた。だんだんとララちゃんが、自分の彼女のようにも思えてきてしまっている。そういう感覚に近いのかもしれない。
お人形さんを可愛がる感覚とは、全く違うものだった。
洋服屋へ行くと、お揃いのパジャマとララちゃんが似合いそうな私服を、私が厳選して買ってしまっていた。
「 お揃いのパジャマ、今日から着ようね!」
と言いながら、一緒にパンケーキを食べていた。ララちゃんの笑顔が見れる事が、本当に嬉しくて、何より幸せであった。
「 こんなパンケーキ、私初めて食べた!洒落てる! 」
ララちゃんは、今の時代の色んな物に興味津々だった。
毎日、毎日一緒にいる時間が楽しくて嬉しくて、一日があっという間に過ぎ去っていった。
次第に、私達は、昔からの大親友のようになっていった。
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