第一章

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第一章

 毎日、日が暮れる頃に起き出すと、カーテンの閉め切った部屋で大きめのパーカーから黒いドレスに着替えて街へ繰り出す。宛もなく街を漂う男を見つけては、ホテルへ誘う。ただ、その男が生きてホテルから出てくることは二度とない。 私は柘榴が好きだ。真っ赤に熟れた柘榴が。そして、柘榴のように真っ赤な血も好きだ。確証もないのに、明日が来るのだと勝手に信じていた男たちの体に流れていた血は美しい。どんな人間でも血は等しく赤く輝いている。けれど、血は不味い。切り裂いた喉や腹から吹き出す血はただ鉄臭いだけで美味しいとは感じられない。それでも私は血を飲む。特に、腹を切り裂いたときの血は胃の内容物が混ざっていて吐き気がするほど不味い。初めて人の喉を切り裂き、血を飲んだときから私の体は血を求めている。殺人にも血飲にも一種の中毒性があるのかもしれない。  駅を出て、ホテル街を歩いていると後ろから声を掛けられた。 「お一人ですか?もしよかったら、朝まで付き合ってもらえませんか。一人で飲んでいるのも飽きてしまったので」 黒いジャケットを着た、一見するとホストのような見た目の男だ。私は承諾するとホテルへ誘導した。男がコンドームを買うというのでホテルの隣のコンビニの前で待っていると、くすんだ金髪の男に声を掛けられた。3Pも嫌いではないので誘いに応じることにした。血の吹き出す様子が二度見れるのも良い。少しするとさっきの男がコンビニから出てきたので、くすんだ金髪の男のことを紹介すると、問題ないと言ったので三人でホテルへ入った。  部屋へ入ると、ワインを頼もうとする黒いジャケットの男とは反対に、くすんだ金髪の男は早速、私を脱がそうとしてきた。私のことを性欲を処理する道具としか思っていないようだ。まあ、ほとんど殺すために誘いに応じた私の言えることでは無いかもしれないが。私も、早く快楽に身を溺れさせたかったので男のシャツのボタンを外しに掛かった。
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