第一章

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*** 「っん、はあ、あぁんっ、ああっ」 「はぁ、はぁ、んっ」 自分と男の吐息が混ざり合う様子を私はどこか遠いところから冷めて見ていた。黒いジャケットの男はあまり私を攻めてこないが、くすんだ金髪の男は初めて女性の裸体を見た中学生かのように余裕もなく攻めてくる。激しく攻められるのは嫌いではない。でも、そこに快楽があってこそだ。私は時折、男の下で淫らに喘ぐ自分に冷めてしまう。だから、余計なことなど何も考えられないくらい快楽で満たしてほしい。  二人の男が果て、眠りにつくと私はバッグから果物ナイフを取り出し、男の上に跨がる。血を洗い流せるように服は着ていない。まずは、くすんだ金髪の男からだ。あと数秒の命だとは知らず、のんきに寝息をたてている名前も知らない男の喉に、ナイフを突き刺す。空気の抜ける「ひゅぅっ」という音がして呼吸が止まる。ナイフが皮を破り、肉を引き裂いてベッドに突き刺さる感触を確認すると、少しナイフを引き抜いて一気に横に切り裂く。吹き出してきた鮮血が、私を真っ赤に染め上げる。そう、まるで柘榴の果汁ように。  その時、横から声がした。 「きれいだ」 私は驚いて声の主を見つめる。先ほどあまり攻めてこなかった黒いジャケットの男だ。もちろん、今はジャケットなんて着ていないが。私が何も言わずに黙っていると男は言った。 「きれいだ。そうやって血を浴びている君はとてもきれいだ。その恍惚とした顔をいつまでも眺めていたい」 「あなた、バカなの?それとも頭がおかしいの?目の前で人を殺して血を飲んでいる人がいるのよ。あなたも今からこの男と同じ運命を辿ることになるのがわかっていないのかしら」 そう言う私を見て、男はなぜかうっとりとして言った。 「私が君のことをきれいだと言ったのは本心だ。会ったときから美しいと思っていた。最後に君が私の喉を切り裂き、血を飲んでいる姿を見られるなんてこれ以上に幸せな死に方はないじゃないか。」 その男の言葉に私はもう男を殺す意欲を失っていた。 「そんなこと言われたのは初めてよ。あなたを殺すのは後にするわ。それより、少しお話ししない?血を浴びる私を美しいという人間に、少し興味がわいたの。」 そう言って私たちは首から血を滴らせる死体の横で再びベッドに沈んでいった。
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