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お仕事頂戴
「またかよ」
「どうしたの、一斗」
「今週は仕事ありませーんだってさ。チョイ役でも何でも良いし、オーディションだって受けるって言ってんのに」
「なるほど、マネージャーさんね」
理一は我が家でせっせと餃子の皮に餡を詰めている。
「俺の本業、アルバイトになっちまうよー」
「学業は良いのかな」
「それは君もですよー」
理一は順調に知名度を上げ、学校を休む日も多くなった。
じゃあ、俺は?
このままじゃ精勤賞でも取れる勢いである。
「あー、舞台でも観に行って、自分で売り込んでくるかなー」
天井を見上げると花柄だった。
「え、天井ってさ、こんな柄だっけ」
「今更何言ってるの! 俺は初めて来た日から可愛い部屋だなって思ってたよ」
こういう見たいものしか見ようとしていない性格が良くないんだろう。上手く行かない理由を考える。
「一斗は天才子役として名を馳せたんだし、落ち目とか言われないように大事にしてくれてるんだと思うよ」
「なんか酷いんですけど」
何が? と言いたげな表情が素のリアクションだと考えると、この先も芸能界を渡っていけるのか心配になる。
「悪い大人に騙されるなよ」
「親戚のおじちゃんみたいだね」
いやいや、笑い事じゃないよ。
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