一度目

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一度目

「寒くなってきたら、ここで星見るの辛いかもな」 「焚き火でもしちゃえば良いんじゃない」 「いや、さすがに部屋追い出されるからやめよ」  理一はさっきからそわそわしている。  俺たちの仲で隠し事なんてあるわけないと思ってた。 「彼女でもできたんか?」 「うん」 「そうか」  男の青春より彼女との時間の方が大事になってくるんだろうな。ただでさえ理一は忙し「役の中でね」  は? 「一斗はキスしたことあるの」 「そりゃあるけど」 「はぁ?」 「何キレてんだよ」 「俺なんか付き合ったこともなくて、キスシーンがファーストキスなんてどーしよおおおおって思ってるのに、マジなんなの!?」 「ラブストーリーの舞台なんかやったら、毎公演やるんだぞ」 「知るかよ!減るもんじゃないなら、俺としろ!」 「別に良いけどさ」  毛を逆立てていた猫が大人しく丸くなったとでも言おうか、なんだろ、ムード作んなし。 「一斗、俺、一斗のこと尊敬してるよ」  そりゃ、どうも。  かっこつけて、唇を重ね合わせたのは一瞬のこと。 「俺も理一のためになるなら何だってする」  よく知らない女優とキスするより、俺とした方がいいと思って、とクラスで話していたら、みんながとても静かになったのは、印象深いエピソード。  いつかバラエティ番組でも話してみよう。
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