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エゴサーチ
「一斗ぉ、エゴサってなんだろー」
「今まさに君がやってることですよー」
今夜は真面目にテスト勉強をするつもりで一斗の部屋に来ている。家主は絶賛夜食準備中。
「俺がやっていること?」
「その自分の名前で検索してることを言うんだよ、エゴサーチ!」
メンタルに悪いからやめろよなー、とチャーハンを炒めながら言う。
「『理一くんがエゴサして知ったらどうするんですか』『機械音痴っぽいからしなさそう』……え?脈絡もなく草がいっぱい並んでるんだけど」
「その先は絶対読むな」
「一斗は分かるの?」
「分かるもなんのって、黒歴史だわー」
「配信とかやってたってやつ?」
「ああああー、聞きたくない」
「危うく2.5次元俳優になりかけたってやつ? いいじゃん、別に」
「俺は良くても、事務所の売り方と違うからなー。形振り構わないのは良くないって学んだ」
「本当に一斗は芝居が好きなんだなぁ」
「芝居が好きなのか、上手い芝居が観れたって喜んでもらえるのが好きなのか」
「急に哲学的なこと言うね」
熱々のチャーハンが目の前にドンっと置かれた。
「理一もそうだろ。母親が喜んでくれるから」
「今時そんな理由じゃ反感買うよ」
「どんな模範解答があんの?」
「女の子にモテたくて」
「そうだった」
俺の大好きな一斗の笑顔。子どもみたいな満面の笑み。
「実際そうなんだから、良いじゃないかー」
いきなり棒読みで何かのデモみたいに拳を軽く突き上げる。
「お互いピュアなとこあるよな」
苦笑いしながら、いただきます、と呟いて食べ始めた。
「まーくんが言ってた。お前はピュアかと思ったけど闇が深い系だなって」
「言えてるわー。二人して闇堕ち系ね」
一斗と堕ちる闇ならどこまでも行こう。
でも、浮かれているのかもしれないけれど、俺たちが見ているのは光だと思う。
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