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東京は砂漠
個性派俳優を多く輩出しているらしい事務所に所属している。
らしい、と言ってしまうのは、俺自身がこの業界についてまだまだ知らないことだらけだからだ。
子どもの頃からどっぷり浸かっているからと話す一斗にいつも聞いてもらうようになった。きっと話しちゃいけない大人の約束事だって。
母の妹がモデル事務所を立ち上げたと聞いて、田舎のおばちゃん丸出しのうちの母さんが、どんな仕事をしているのか見てみたいと言いだしたのがそもそもの始まり。
父の代わりに俺をお供にして、東京へと繰り出した。
大人の職場見学の場で出会ったのが、今のマネージャーである。
「あなた、タレント業には興味ない?」
いきなり声をかけられたのを覚えている。
ほとんどテレビを観てこなかったから、タレント業が何か分からないまま、あれよあれよと今の状態。
最初は事務所主催の株主イベントで注目の新人なんて言われて大先輩と並んでトークしたり、何回チョコを齧ったか分からないCM撮影。
少年漫画原作の実写化の主人公に抜擢されからというもの、戦隊シリーズに出たりと芝居の仕事が続いていた。
こんな素人が大役をもらえるなんて、明らかに事務所の力で捻じ込まれているのは、現場での雰囲気で嫌でも分かってしまう。
敏腕と呼ばれているうちのマネージャーは俺をアイドルにしたいらしい。
「一斗、今日も泊まりに行っていい?」
「俺、バイトあるけど? 先に家で待ってるか?」
一斗は芸能事務所に所属しながらも、アルバイトをしている。
「なるべく早く帰るようにするからな」
一斗、俺、今度はアイドルバンドのボーカルやれって言われちゃったよ。
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