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夜空
「どうよ、夜空のメンバーは?」
一斗はからかうわけでもなく心配してくれているけれど、俺の憂鬱はそこじゃなかったりする。
「いや、夜空は酷くない? 夜空だよ? なに、ロックする気ある? フォークでも歌うの?」
「そこかよ!」
今日は珍しく休日だと言うのに、一斗も俺も予定が入ってなかったから昼間からこうやってダラダラしている。
マンションの屋上で、一斗と俺が泊まった時に着る服を二人で干している。良い天気で風が気持ちいい。
「せめてローマ字でも良かったのに。YOZORAみたいな」
「どこかのグループに被ってくるぞ、きっと」
「じゃあ、Night Skyみたいな?」
「そっちの方がダサい気がする」
「えー、俺だけなの?気に入らないの、俺だけなのー?」
タオルが風に飛ばされそうになるのを追いかける一斗に向かって叫ぶ。
「へぇ、他のメンバーは気に入ってるんだ?」
「事務所に期待されてるって感じがして良いって」
「大空プロだからか! 良いじゃん!」
一斗は何でもとりあえず肯定しがちだと思う。
「メンバーが良い人そうで良かったよ。理一がリーダーなんて一時はどうなるかと思ったけど」
「それについては現在進行形なんだけど。最年長なんて3つも上だし!」
「歳重ねたら、3つなんて少しの差になるぞ」
一斗は先を見据えているんだ。
「さては、期間限定だとでも思ってるな」
「ころころ考え方が変わるし、きっとまた」
洗濯かごを持って俺の肩を叩く。
「事務所の名前背負ってるんだぞ。そう簡単に終わらせてもらえないぞ。覚悟決めろ」
「洗濯かご持ってたら格好つかないよ」
「それもそうだな」
笑いながら屋上を後にしようとする背中を見守っている俺の顔ったら酷いもんだと思う。
咄嗟に強がったけれど、きっと彼には気づかれている。
自分で決めるんだよって一斗は俺に何度も言ってくれたのに、今更ながら思い返している。
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