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第5話
何かが、われる音がした。いや、なにかではなく、きっと花瓶だろう。
花瓶の場所へ、いそいでもどる。
床には、われた花瓶と、その破片と、造花がちらばっている。さきほど、わたしが壊してしまったものにそっくり。
今の音は、この花瓶がわれた音だったのだろうか。
でもこれは、わたしが壊した花瓶のようだ。じゃあ、われる音が聞こえたのはなぜだ。
いつの間にかスタッフが新しいものと交換したのだろうか。では、これが別の花瓶だったと仮定して、じゃあ、壊したのは一体誰だ。
なんとも、わけがわからない。
この屋敷には、わたし以外にも、だれかがいるのだろうか。でも、自分以外の人物がいるような気配はない。
花瓶の前で、じっと考えこむ。そうこうしているうち、
ボーン、ボーン、ボーン。
また時報。今回も三回。時刻を確認する。三時。今度こそまちがいない。また三時がやってきた。
ふと、床に目をやる。床にはなにもない。
目線を上にずらす。不思議なことに、花瓶はテーブルの上に、きちんとおかれていた。
どこも壊れていない。ひびすら入っていない。造花も一輪きちんとさしてある。
時間がもどった、ということなのだろうか。だとしたら、また誰かがこの花瓶をわるのだろうか。
わたしは、その人物があらわれるのかどうか、かげからみはることにした。
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