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第6話
ガシャン。
花瓶がわれた。かたわらに人がいる。顔を確認する。
わたしだ。わたしがもう一人いる!
まさか、さっき花瓶をわったのも、わたしだったのか?
だとすると、少なくともこの館には、今ここにいる「わたし」、さっき花瓶をわった「わたし」、そして今しがた花瓶をわった「わたし」の少なくとも三人の「わたし」がいることになる。
ボーン、ボーン、ボーン。
時計がなった。また三時だ。
「まさか……」
あわてて入口までもどる。
やはり。あたらしい「わたし」は、そこにいた。扉がなくなっていることに、おどろいている。
これで、「わたし」は四人になった。いや、待てよ。どうして四人だといえる。このわたしが一番最初にここへ入ってきた「わたし」だと、どうしていえるのだ。
もし、このわたしより前に入ってきた「わたし」が、すでに何人もいるとしたら。そして、その先人の「わたし」が、まだ誰もここから脱出できていないとしたら。
ここには想像している以上に、複数の「わたし」が存在しているのかもしれない。
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