ロスト・メモリ

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二年前に父親が家を出て行ってから、健斗の母親はフルタイムで働き始めた。 母が新しい環境に慣れるために大変な思いをしていることも、今までの生活が一変するほど忙しくなったことも、健斗は子どもなりに理解しているつもりだった。 だから、おれだってずっと頑張ってた。勉強だって、運動だって。 だけど、父さんがいなくなってから、母さんはおれのことを見てくれない。 毎日疲れた顔で仕事から帰ってきて、心底面倒くさそうな、何の興味もなさそうな目でおれを見る。 何か話そうとしても「また今度」と遮られるから、最近は会話だってほとんどない。
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