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掌にのせた青紫の球体の上に、少年の涙が落ちる。
それを吸い込んだ硝子の球は、緑、黄色、淡いピンクとさまざまな色に変化して輝いた。
「君が落としたものは見つかったみたいだね。きっとそろそろ、彼女も全て見つけている頃じゃないかな」
少年を見つめる男の目は、温かな慈愛に満ちていた。
琥珀色の瞳をそっと細めると、男が少年の前で白壁の部屋のスライドドアを開く。
「どうぞ、お気をつけて」
ドアの向こうに一歩足を踏み出した少年の耳に、男の不思議な声が高く低く響いた。
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