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健斗が目を開けると、伏せていた母が、ばっと勢いよく顔を上げた。
「健斗!大丈夫なの?痛いところはない?」
健斗の手を痛いくらいに握りしめた母が、血相を変えて矢継ぎ早に問いかけてくる。
ぼんやりとした目で見上げると、母の腕や頭には包帯が巻いてあった。
「ねぇ、健斗。大丈夫?」
無反応な健斗に母があんまり必死に声をかけてくるから、なんだか可笑しかった。
「それは、こっちのセリフなんだけど……」
薄らとしか記憶にないけれど、歩道に飛び出した健斗を庇って車にぶつかったのは母親だ。痛いところがあるとしたら、母のほうだろう。
「あぁ、私は大丈夫。精密検査も問題なかったし。車のスピードがそんなに出てなかったみたいで、軽い打撲だけ。健斗が無事か気になって、痛みなんて感じてるどころじゃ────」
「ごめん……」
健斗の呟く声に、母が話すのをやめる。
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