ロスト・メモリ

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母親が大型スーパーの事務所に迎えに来る事態が起きたのは、健斗が万引きで捕まったからだ。 誘ってきたのは、健斗が中学に上がった頃から遊び仲間に入れてもらっているひとつ年上の先輩だった。 「なー、おもしろいゲームがあるけどやんない?」 そんな誘い方をしてきた先輩に、深く考えずに頷いた。 だがそれは、健斗が想像していたようなゲームとは全く違っていた。 「あの店から何でもいいから一個盗ってくる。誰が一番に戻って来られるか競争な」 先輩がそう言って健斗や他の遊び仲間に向かってニヤッと笑いかけてきたときにはもう手遅れで、「やめる」と言えるような雰囲気ではなくなっていた。 適当に何か手に入れて、早く戻らないと。 先輩は普段はおもしろくて優しいけれど、健斗たち遊び仲間が思い通りに動かないと、怒って暴れるときがある。
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