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「見てわからないか、神だよ。ほーれ、光輪もあるじゃろ」
「か、神っ!?」
「そうじゃ、驚かせたならすまんの」
「神様が、なぜこんなとこに!?まさか、俺、寝てる間に死んじゃったとかっ!!」
おろおろしながら、拓真は自分の体をあちこちまさぐる。
「心配するでない。おまえは生きておる。今日、ここに来たのは他でもない、おまえの恋愛に関してじゃ」
「は?」
恋愛って、いきなり言われても。
「ああ。おまえは葵という女子のことが好きなんじゃろ。で、ずっと全身全霊をかけて告白し続けておる。これまでいったい何回告白したか覚えておるかね?」
「……さあ、わかりません」
「人類史上、ここまでひとりの異性に告白し続けた例は過去にないんじゃよ。何度ダメでもくじけず告白し続ける、純粋な愛の情熱を貫く少年。その健気な姿は天上界でも話題になっての」
「は、はあ」
俺が天上界で話題になってる!?
スケールが大きすぎて理解がついてこない。
「そこでおまえに、とあるスキルを与えてやることにした。まあ、頑張ったご褒美じゃ」
「ご褒美?」
ぽかんとする拓真の右手を、神は杖でぽんと叩いた。
「痛ッ!なにするんですかっ!」
叩かれた拓真の右手は、突如として眩しい光を放つ。
「な、なんだこれっ!?」
やがて光はふっと消え、右手の甲に黒い炎のシンボルマークが現れた。
「その炎の紋章は、君が持つ愛の情熱そのものを示しておるのじゃ」
「……いや、こんなのいらないっすよ。なんかダサいし、先生に刺青だと勘違いされたらこっぴどく怒られるし」
「ばかもの!!神が与えたもうた紋章になんてことを!!」
神は、杖でぱこんと拓真の頭を叩く。
「痛ッ!」
「おまえのその右手は、触れるだけであらゆる女子の心をテイムできる『奪心(ハートテイム)』というスキルを得たのじゃ。そのスキルを使えば、世のどんな美女でも一瞬でお前に惚れてしまうんだぞ」
「奪心……?スキル……?」
「ああ、おまえが好きでたまらない葵でさえ、右手を使えばいちころという訳じゃ」
「葵も……」
考え込む拓真を見て、神はベッドから立ち上がる。
「まあ、そのスキルをどう使うかはお前次第だがな。じゃあの」
「あ、ちょっと……」
あせって声を掛ける間も無く、神はふっと消え失せた。
はっとしてまわりを見渡すと、見慣れた自分の部屋だ。立ち込めていたもやは跡形もない。
「……いったい、なんだったんだ今の。俺、ゲームのやりすぎでおかしくなったのか?」
呆然としながら右手を見やる。
その甲には、しっかりと炎の紋章が刻まれていた。
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