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2025年6月 チャチャのアサルト
この日の東京競馬場は大忙しだった。
東京優駿が終わった直後に、今度はG2に格付けされている重賞戦、目黒ステークスを開催することになっている。
この競技に参加する馬は16頭だが、その中に1頭だけ牝馬が混じっていた。
彼女の名はチャチャカグヤ。去年、桜花ステークス、優駿牝馬、秋華賞を制したクラシック3冠牝馬だが、その直後に怪我で療養していたため、今年の成績はあまり冴えなかった。
目黒ステークスは、4歳以上の馬が出場資格を得られるため、彼女の人気は3番。いざレースが始まっても得意の大逃げを打たないどころか、馬群の中央に埋もれている。
その姿を見た観客は、大いに落胆したようだ。「こんなのチャチャじゃない」や「さっさと引退しろ」とヤジを飛ばす者まで現れる始末だ。他の観客の多くも口には出さないが、チャチャの時代は終わったと思っている様子である。
ところが、レースの終盤になったとき、そのヤジは嘘のように静まり返った。彼女は観客たちの前で、切れ味抜群のラストスパートを見せつけたのだ。
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