月一族の親子

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 阪神競馬場が、それぞれの馬に招待状を送ったのは、それから1週間後のことだった。  シュバとチャチャカグヤは、その知らせを茨城県の稲敷にある真丹木きゅう舎で、ヒダカダーロも隣の直江きゅう舎で聞いていた。  仲の良い彼らが裏庭に集まったのは、当然の成り行きだろう。 『ヒダカダーロ…ギリギリだったね』 『ああ、よく選外にならなかったよなぁ』  去年の3冠牝馬のチャチャカグヤや、馬券馬として謎の知名度を持つシュバはともかく、ヒダカダーロにお呼びがかかったことには、本人も驚いているようだ。 『もしかして、暴君2世だったからかね?』 『大会中にタックルをされてやり返したり、尻を噛んできた牝馬を追い回したりと、君の活躍も凄いからね…いろんな意味で』 『誉め言葉と受け取ってやるよ』  チャチャカグヤはヒダカダーロに尋ねた。 『ところで、ジェントルさんも呼ばれていますけど…』 『ああ、ジェントル先輩はパスだそうですよ。昨日、安田記念で勝った後、脚の調子がおかしくなったみたいですから』  チャチャカグヤは寂しそうな顔をしながら『何事もなければいいですね』と囁いた。
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