宝島記念に向けて

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宝島記念に向けて

 6月も中旬になると、馬運車が再び活躍していた。  中にいるのは、普段通りのシュバババババババ。機嫌のよさそうなラ・コンテス・ド・ペルル。試合前で緊張気味なチャチャカグヤ。そして、機嫌の悪そうなヒダカダーロだった。 『どうしたんだよ、ダーロ?』 『何でもねーよ』  どうやらヒダカダーロは、この梅雨の時期が嫌いらしい。馬運車の窓に着く水滴を怪訝な表情のまま眺めていた。 『俺、やっぱりこの車の中で一泊しようかな?』 『そこまで濡れるの嫌いなのか?』  シュバが言うと、ヒダカダーロは当然だと言わんばかりに頷いた。 『俺が認める水滴は、お前んちの温泉とトレセンの温水シャワーだけだ!』 『お前が大樹海に投げ出されたら、1晩で発狂しそうだな』  実際に、雨にぬれたり泥水がかかることを嫌がる競走馬は多く、野ざらしの環境でも生きていける馬は、ある意味で貴重なのかもしれない。
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