宝島記念に向けて

2/9
前へ
/347ページ
次へ
 馬運車は、着々と関西に向けて進んでいたが、その雨脚は更に強くなり、中部地方に入ると雨粒が車体にぶつかり、独特の音が車内に響いていた。  シュバは立っていることに疲れたのか、腰を下ろして目の前の姉馬を眺めている。 『そういえば、姉さんとペルルはバスタードブラックさんと走るの、これが初めてだよね?』  チャチャカグヤとラ・コンテス・ド・ペルルはお互いを見合ってから頷いた。 『ええ、そうです』 『実は、少し前に彼のレースを見たんだけど…走法が少し変わっていたんだ』  ヒダカダーロの目がシュバに向いた。 『それ、まさか、更に速くなってるってことか!?』  シュバは少し間を置いた。 『それが、それほど速くなる走法じゃないように思えるんだ』  馬運車の中を沈黙が支配した。誰もが、シュバの口にした不可解な言葉の意味を考えているのだろう。  その沈黙は、およそ4秒後にペルルが破った。 『それはつまり…』 『阪神競馬場に、何か秘密があるのかもしれない』
/347ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加