月一族の親子

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 チャチャカグヤは言った。 『そういえばシュバ』 『何だい、姉さん』 『もし呼ばれたらですけど、私も宝島記念に参加しようと思います』  その言葉を聞き、シュバは合点がいった様子で頷いた。 『なるほど。だから姉さん…あんな走り方をしたのか…』  宝島記念は、阪神競馬場で行われるG1レースだ。  この大会の特徴は、なんといってもファン投票によって出走する馬を決めることだろう。去年はチャチャカグヤにも声がかかったのだが、3歳クラシック戦の中で、スケジュールが過密になりすぎるため断った経緯がある。  今年、3歳クラシック戦に挑んでいるシュバも、予定的には見送るべきなのだろうが、彼はこの大会を制することに並々ならぬ思いを抱いている。  ここにはかつて、練習試合とはいえシュバを大敗させ、そして寝込むほどに苦しめた駿馬バスタードブラックが出場することが既に決まっているからだ。  古馬である彼と、3歳馬のシュバが戦える機会は少なく、なんとしてもこの大会に出場して、彼を倒すことが今のシュバにとって大きな目標となっている。
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