月一族の親子

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 茨城県の稲敷トレーニングセンターでは、シュバたちの父馬のドドドドドドドドドが落ち着きなく、馬運車の止まる駐車スペースの側をウロウロと歩いていた。近くにいる青崎きゅう務員も、同じようにソワソワとしている。 「彼らの帰りが待ち遠しいね」  ドドドは頷くと、再び落ち着きなく歩いたり、馬運車の来る方角を眺めたりしている。  シュバたちを乗せた馬運車が到着したのは、それから5分後のことだった。  その姿を一目見ると、彼は父馬らしい威厳に満ちた態度をとっているが、シュバたちの視界に入らない尻尾などは、未だに落ち着きなく揺れている。本当に待ち遠しかったのだろう。  シュバたちが姿を見せると、ドドドはすぐに声をかけた。 『よく頑張った、お前たち』  父馬に声をかけられて喜ぶシュバとチャチャカグヤを見て、ヒダカダーロやウマナミジミーは羨ましそうな顔をしていた。  ドドドのような種馬は仕事以外で、自分の住む牧場から離れることはないため、こうして子供たちの指導をする者はとても珍しい。彼がここにいるのは本人がとても面倒見がいいからというだけでなく、グランパ牧場が変わった教育方針を取っているからである。
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