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「ねぇ、食べないんだったらこれ私が食べていいの?」
黒い炎を立ち上らせる心臓を指差す少女。さすがの執事も意表をつかれて口をぽかんと開けた。
「・・・・・・いいですけど。たぶん死にますよ?」
「やったー」
ナイフとフォークを手に持って、心臓の乗った銀の皿の前に座る少女。無垢で可憐な仕種が不気味さを加速させる。
上で浮遊したまま音もなく回転していた毛糸球が床でバウンドした。
執事が自失してコントロールを失ったのだ。
圧倒的な邪気を放つ魔王の心臓を、少女は平気な顔で平らげていく。
これには、さすがの執事も度肝を抜かれたようだった。
物理的に、少女の小さなお腹に子豚サイズの肉が収まるはずも無いのだが、彼女は何事も無く完食した。
何かのトリックなのだろうか?少女もネクロのように体内に何かを飼っている?あるいは少女そのものが怪物なのか?
「素敵な食べっぷり♪」
執事は乙女のように胸の前で手を組んで、そう熱っぽく囁いた。
少女が食後もけろりとしているので、刑罰は再開された。
□□
一人、また一人と脱落していった。
体調に異変をきたして運ばれて、2度と戻らない者、あるいは精神に変調をきたして、これもむこう側から戻らない者。
俺は、土壇場でツキを発揮した。
三週、四週目と、俺は致命的な毒物から逃れ続けた。
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