7人の毒味囚

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□□ あまりにも広すぎる世界に疲れきっていたので王宮に入っていくときには安堵した。十数年も洞窟内に幽閉されていた人間にとって途切れる事無く広がる世界に身を置くのは大空に投げ出されたような恐怖だった。 巨人を捕らえておくための牢屋として建造された、そんな伝説を持つアトラス宮に俺は連れてゆかれた。ドーム状の建造物の内部には、本当に数十メートル級の巨人を入れていけるだけの空間が広がっている。 十数年前の記憶では、このアトラス宮は陸軍の演習や運動競技の公式大会などに使われていたはずだ。 だが、今、この空間は廃墟然とした荒廃の気配に満ちていて、長らく使用されてないのが伝わってきた。 ドーム状の巨大廃墟の真ん中に、ぽつんとテーブルと椅子が置かれている。一般の家庭にあるような食卓が、この異様な景観の中で浮き上がって見える。ドームの天井を覆う草木の緑色に彩色された陽射しが、少女の骨のように白い真新しい皿にあたっている。 俺は、食卓を囲む7つの椅子のひとつに腰かけさせられた。 広大な空洞の底で、たった一人ぽつねんと座っている奇妙な時間。身をよじると、地面から生えた固定具に繋がれた手枷が音をたてた。広大な空洞の内部で、音が遠く響くのを感じる。 何が始まろうとしてるのか、見当もつかない。 そのとき、ドームの扉が音をたてて開く。 二人目の囚人が、食卓に連行されてくるところだった。
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