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第三十八話
朝。起きても隣には常田くんがいる。よだれ垂らして、夜は獣のようだった貴方は犬、ううん、子犬のよう。
「……おはよ、梛」
起きた、子犬が。欠伸してまた寝ようとしてる。
って寝かせないわよ。朝早く起きた理由があるんだからっ。わたしは常田くんの体を揺らす。
「いやや、寝させてや」
「あなたが言ったことでしょー」
「あと五分ー」
「だーめ!」
「眠いー」
「もぉっ!」
わたしは起きてシャワーを浴びてルームウェアに着替え朝ごはんを作る。
目玉焼きを焼いている頃にようやく常田くん起床、後ろから抱きしめてきてまた甘えてくる。
「梛ぃーおはよ」
「おはよ。さぁシャワー浴びてきなさい寝汗ぐっしょりだったから」
「ん? スッゲー昨日激しかったからな。一晩で5キロ痩せたやろ」
「もぉ! さっさと浴びてきなさい!」
何気ないいつものやりとり。こんなやりとりをずっとそばでしていたい。
朝ごはんを食べて涼しいうちにある場所に向かった。
そこはわたしの家のお墓だ。変わりは親戚の人がしているのだが、あまりそこまで親交はない。
てかわたしの母さんとばあちゃんが眠っているくせにわたしはそこまで来ない場所だった。(ばあちゃんは写真だけ部屋に置いてあって毎日手を合わせているけどね)
常田くんととある日話していて、お墓の話になってあまり行かないとか言ったらそれはダメだよって怒られちゃった。
だからお墓参りしようってなったの。場所は何となく覚えていて。狭い霊園だったけどお墓は綺麗にしてある。
たしかばあちゃんの妹さんの長男夫婦が管理してくれているんだけどそこもしっかりわかっていない。
わたしたちは持ってきたお花を瓶に入れた。そして手を合わせる。
「梛のお母さん、おばあさん……はじめまして。常田と申します」
常田くんがいきなりお墓に向かって言うからびっくりした。真剣な顔をしている。
「梛さんと今日、結婚式します、と言うか写真を撮るだけですけど、どうか見守っててください。遠く離れていても梛さんを幸せにします」
「常田くん……」
「あとよかったら僕の目もよくしてください!」
神社じゃないんだからっ。
「なんちゃってー、梛もなんか願っとき!」
「そんなことしないわよ……」
常田くん見たく口に出しては言わなかったけど心の中でばあちゃん、ウェディングドレスを今日着るから空から見守っててね、と。
母さん……特にないけどあなたに似て女性顔に産んでくれてありがとうと。
そして、欲を言えば……わたしをほんとうの女にしてください。
「なんちゃって……」
「ん、なんや?」
「なんでもない……」
つい笑ってしまった。
「ほな、いこか。今日は雲もあるからかんかん照りにはならんやろ」
「あついとたまらないわ」
「そやな」
わたしたちは霊園を後にした。
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