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「沈まぬ月」とは、隣街リヌエで毎年行われる月夜祭りのことだ。
当日は、日の入りから日の出まで、街中の明かりを絶やさすことなく灯し続け、張り巡らせたロープに住人が持ち寄ったランタンを吊り下げて、街を温かい色で照らし出す。
小高い丘に立つその街が、まるで宵闇の空に浮かぶ月のように見えることから、いつしか「沈まぬ月」と呼ばれるようになったという。
その日は、シシィの住む国でも特別な日なのでしっかり記憶していた。
「そこでさ、なんと! あの有名なフェリチェで新作発表するんだって!」
青年の言葉にシシィはガバッと身体を起こした。
(フェリチェで⁉)
フェリチェといえば、いつも長蛇の列ができているお菓子屋さんだ。噂には聞いたことがある。
もう一人の青年も興味を引かれたように、声のトーンが上がる。
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