1.美味しいうわさ

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「へぇ! どんなやつ?」    シシィは思わず居住まいを正し、木の上から耳をそばだてた。    青年は、とっておきの話をするように口の端をニヤリと上げる。 「詳しいことは当日まで極秘らしいんだけど――」    口元に手をやり、声を潜め、顔を近づける。    シシィもジリジリと木の上から身を乗り出した。 「なんでも祭の日限定のスイーツなんだってさ!」 「限定!」 (スイーツ⁉)    青年とシシィの心の声が交差する。    シシィはうっとりと目を細めた。 (どんなお菓子だろう? 有名店だからきっと絶品に違いないだろうけど……!)    などと考えていたら、口から透明な雫がぽたりと落ちた。 「うわっ、冷たっ! 雨?」    青年が声を上げ、隣の一人がこちらを見上げた。 (あら、やだわ)    シシィは濡れた口元をでソッと拭った。
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