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「へぇ! どんなやつ?」
シシィは思わず居住まいを正し、木の上から耳をそばだてた。
青年は、とっておきの話をするように口の端をニヤリと上げる。
「詳しいことは当日まで極秘らしいんだけど――」
口元に手をやり、声を潜め、顔を近づける。
シシィもジリジリと木の上から身を乗り出した。
「なんでも祭の日限定のスイーツなんだってさ!」
「限定!」
(スイーツ⁉)
青年とシシィの心の声が交差する。
シシィはうっとりと目を細めた。
(どんなお菓子だろう? 有名店だからきっと絶品に違いないだろうけど……!)
などと考えていたら、口から透明な雫がぽたりと落ちた。
「うわっ、冷たっ! 雨?」
青年が声を上げ、隣の一人がこちらを見上げた。
(あら、やだわ)
シシィは濡れた口元を前足でソッと拭った。
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