26人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、猫だ」
「げっ、じゃあこれ猫のヨダレかよ⁉」
青年は、服の袖を引っ張って、頭をゴシゴシ拭いている。
フンとシシィは鼻を鳴らした。
(失礼な! 猫は猫でもただの猫じゃあないんだから!)
シシィはぴょんと木から飛び降りると、道の反対側にある生け垣の中へと飛び込んだ。
国へ帰るための呪文を口の中で小さく唱えると、身体が淡く光り出す。
その光を受けて、絡み合っていた枝がするすると動き、木のトンネルが現れた。色とりどりの花が咲き乱れるトンネルの中を、シシィは風のように駆け抜ける。
「ただいま!」
「あれ、シシィ? そんなに息を切らしてどうしたの?」
トンネルを抜けた先で、まん丸の金色の目をさらに丸くした長毛の黒猫が、二本足で立っていた。
シシィは同じように二本足で立ち上がると、黒猫――キンに向かってニンマリした。
「『人の日』の過ごし方が決まったのよ!」
――「1.美味しいうわさ」おわり。「2.猫妖精の国」へつづく。
最初のコメントを投稿しよう!