1.美味しいうわさ

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「あ、猫だ」 「げっ、じゃあこれ猫のヨダレかよ⁉」    青年は、服の袖を引っ張って、頭をゴシゴシ拭いている。  フンとシシィは鼻を鳴らした。 (失礼な! 猫は猫でもただの猫じゃあないんだから!)    シシィはぴょんと木から飛び降りると、道の反対側にある生け垣の中へと飛び込んだ。    国へ帰るための呪文を口の中で小さく唱えると、身体が淡く光り出す。    その光を受けて、絡み合っていた枝がするすると動き、木のトンネルが現れた。色とりどりの花が咲き乱れるトンネルの中を、シシィは風のように駆け抜ける。 「ただいま!」 「あれ、シシィ? そんなに息を切らしてどうしたの?」    トンネルを抜けた先で、まん丸の金色の目をさらに丸くした長毛の黒猫が、二本足で立っていた。    シシィは同じように二本足で立ち上がると、黒猫――キンに向かってニンマリした。 「『人の日』の過ごし方が決まったのよ!」   ――「1.美味しいうわさ」おわり。「2.猫妖精の国」へつづく。
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