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最終話 猫妖精は夢を見る
白い朝日が昇り、ランタンの灯火が消されて月夜祭りは幕を閉じる。
静けさに包まれた街を、サバトラの猫が闊歩している。口には淡く光る猫じゃらしと鮮やかな黄色の花を一輪くわえていた。
人の日が終わりを迎え、一度国に帰ったシシィは再びリヌエの街に降り立っていた。
夜とはまた違った景色の街中を、トテトテとある場所に向かって歩いて行く。
立ち止まって、家を見上げた。限定スイーツと魅惑のレモン炭酸水をごちそうになった家は、まだ眠りに沈んでいる。
(本当に、楽しい時間だったわ!)
シシィは玄関先にくわえてきた猫じゃらしと花を置いた。どちらも人の世に通ずる道に生えている特別な草花だ。人が持つと幸運を呼び寄せるという。
(最高の人の日をありがとうっ!)
ぺこり、とシシィは頭を下げた。
そのときだった。シシィの鼻がヒクヒクッと反応した。
(あらら? 何か美味しそうな匂いが――)
――くぅぅぅ
どこからともなく漂ってきた香ばしい匂いに誘われて、シシィのお腹が小さく鳴った。
たらふくレモンケーキを食べたのに、もう消化してしまったらしい。
(来年はどの街でどんな美味しい物を食べようかしら)
レモンの爽やかな香りを思い出に、シシィはひとまず腹ごしらえするべく、匂いがする方へと駆け出した。
――end
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