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「いいの! この日しかスイーツなんて食べられないんだから!」
人里に猫姿で行っても、猫にお菓子を与えてくれる人間はいない。せいぜい味付け前の肉の切れ端がもらえるくらいだ。
素材の味が堪能できるので、それはそれで大好物なのだが、それでもやっぱり、人が幸せそうに食べている物も食べたいと思ってしまう。
そんなことを考えて、ペロリと舌なめずりしている食いしん坊シシィを、キンは呆れた顔で見る。
「って言って、去年も人間のご飯を食べ歩きしてたよね? それで食べ過ぎてお腹壊してたのってどこの誰だっけ?」
「ふふん! 去年までの私と同じだと思ったら大間違いよ!」
シシィは胸を張る。
「今日は朝から何にも食べてないから大丈夫よ‼」
ポン、と勢いよく灰色の毛に覆われたお腹を叩いて見せた。
去年の敗因は、おそらく朝昼とおやつをたらふく食べた後に食べ歩きに行ったからだ。
そう思ったから、今日は朝と昼とおやつを抜いて、死にそうになりながらも耐えたのだ。
「万が一の時の胃薬も用意したし!」
斜めがけにした麻のポシェットから、紙に包まれた薬を出して見せる。
準備は万端、整えた。
なのに、キンは残念なものを見るような目でこちらを見てきた。
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