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「食への執着が半端なくて、僕は少々恐ろしいよ」
シシィは首を傾げる。
(執着? 普通だと思うけど……そんなことを言うなんて、キンってば、きっとろくなもの食べてないんだわ! 可哀想な子……!)
今度はシシィが哀れみの目をキンに向ける。
「ねぇ、キンも一緒に限定スイーツ食べに行く? どうせ暇なんでしょ?」
「むっ、どうせって何さ? しかも何だかすごく失礼なことを考えていないかい?」
「え? 何のこと?」
キンはしらばっくれるシシィに湿度の高い瞳を向けると、不機嫌そうに耳を反らした。
「悪いけど、遠慮しとくよ。僕にもこれから行くべき所があるからね」
「え、そうなの? それは残念」
意外な返答にシシィは目を見開く。
キンはぴょんと木から飛び降りると、樹上のシシィを仰ぎ見た。
「食べ過ぎないようにしなよね」
そう釘を刺し、口の中で呪文を唱えると、木の根元にあるウロの中へと入って行ってしまった。目的の場所へ向かったらしい。
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