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「私もそろそろ行こうっと」
シシィも木から飛び降りると、小さく呪文を唱えて、キンと同じように木のウロの中へと入っていった。
暗いウロの中で、足元に生える猫じゃらしが淡く光りを放っている。
薄ら緑色に輝く光を目印に、だんだんと明るい方へと進んでいく。
(そろそろ出口だわ!)
白い光りの中へ足を踏み入れたシシィは、次の瞬間、人気のない路地に立っていた。
視線がいつもより高くて、地面までが遠い。手もモフモフの毛に覆われていない。
シシィは曇った窓ガラスをのぞき込んだ。
肩の上で自由に跳ねる灰色の髪、好奇心に煌めくオリーブ色の瞳。素朴な、どこにでもいる町娘の姿がそこにはあった。
シシィはニンマリして、その場でくるりと一回転し、足の感触を確かめるように足踏みする。
「うん、絶好調!」
町娘になったシシィはぴょんと一つ飛び跳ねると、元気に夜の街へと繰り出した。
――「2.猫妖精の国」おわり。「3.露店街」へつづく。
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