序章 善意通訳

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かのヒットマンはファミリーの掟にそむき、無関係な人間を殺した事となる。 世間から見ても、報復や抗争に巻き込んだわけでもなく、マフィアが一方的に一般人の命を奪っただけだ。自分たちのビジネスや利益に必要だったというのは、真っ当な理由には到底ならない。 しかも、誤って殺してしまった相手は、高齢とは言え各筋で名の知れた存在。やがては大事になるだろう。それこそ、警察や、他のファミリーとの抗争の引き金となるかも知れない。 そこで、自分たちは奴の追いかけ、始末するのだ。 遺体はナポリにある産業廃棄物の集積所に捨てる。あとは綺麗好きの〈エコ・マフィア〉が、汚染物質だらけのゴミと一緒に跡形もなく処理してくれるだろう。 個人的な邪魔者を排除できるだけでなく、ファミリーの裏切り者を制裁した結果になるのだ。 「手柄を立てりゃ、そのうちカポ・レジームにものし上がれるかも知れねぇぞ」 「組織を守ったヒーローになるんだな!」 運転席の男と後部座席の男がわくわくした調子で夢を語り、助手席の男は気取った様子で応じる。 「オレ様はコンシリエーリを目指そう。お前たちの頼れる相談役になってやるよ」
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