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たとえ同性結婚が認められていようと、犯罪を生業とする男たちに法律の話など焼け石に水。
痩せた男が、笑いながら窘める。
「ドンだってゲイじゃない。シニョーラが居るし、息子たちもほとんど成人してるんだぞ」
「あいつの方が女役ならどうだ?」
「いい加減にしろ。これ以上おかしな想像をさせるな」
「まあ、いくら綺麗な顔だからって、あの彫刻みたいな筋肉じゃ無理だろうが」
運転席の男はそう言ってさらに笑うが、助手席の男は途端に笑みを消した。
「……女みたいな顔もいけ好かないが、幽霊みたいな青白い肌も気味が悪い」
本人が居ないのを良いことに、言いたい放題であった。本人に聞こえるように言った事もあるが、やはり何も言い返して来ず、気にしていない風なのが余計に気に食わなかった。
「名前の通り、そこらの白人より白いだろ」
「出身がサンタルフィオってだけだろう。あの辺にはよく居る名前だ」
運転席の太った男の言葉を受け、後部座席から声が割り込む。
「ずっと気になってたんだが……なんで忠犬アルフィドなんだ?」
助手席の痩せた男が一度振り向き、それから不思議そうに運転席に目をやる。目的の人物について、こんなにも知らない奴を何故乗せてきたのか。
そう咎めるような視線を向けられ、仕方なく説明する。
「ドン・カルロの忠犬だからだよ。あの忠犬フィドさ、フィレンツェの広場に銅像がある」
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