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第二次世界大戦中の一九四一年、工員カルロ氏は怪我をした仔犬を保護し、フィドと名付けた。フィドはカルロ氏に可愛がられ、毎朝一緒にバス停まで行って出勤する主人を見送り、夕方になれば主人をバス停まで迎えに行った。
しかし一九四三年、勤め先の工場が空襲を受け、カルロ氏は還らぬ人となってしまった。そんな事とも知らないフィドは、それからなんと十四年間もバス停に通い続けたのだ。
降りてくる人を切なげに見つめる犬の姿は見る者の心を打ち、新聞にも取り上げられ、話題を呼んだ。やがて忠誠心を称えて表彰までされ、最期はカルロ氏の墓地の近くで死んだ。その亡骸は主人の墓の隣に埋葬されたという……
当時生まれていなかったとしても、聞いた事くらいあるだろう。海の向こうにも似た話が存在すると聞く。あまりにも有名な、忠犬フィドの物語である。
それでも小柄な男はきょとんとしている。太った男がバックミラーを見上げ、からかうように訊ねる。
「お前、新聞ってモンを読まねぇのか?」
「おれは文字が読めないんだ」
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