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私の夫
私は安藤四海。
私は昔から感情を表に出すのが苦手で表情の乏しい人間で、周囲からも誤解を招いてしまう事が多かった。
家族は理解して受け入れてくれたが、嘸かし育てにくい子供だったろうと思った。
今でも誤解を招いてしまう事は少々あるが、職場や友人にも恵まれて充分幸せだった。
そんな私の人生は突如劇的に変化した。
「僕と一緒に色んな場所に行って楽しんだりしませんか?」
偶々、配属された先で出会った癖のある黒髪で琥珀柄の眼鏡をした優しげな男性に告白をされた。
私の仕事自体が危険を伴う事が多いので誰かと付き合う気もなかった。
しかし、彼と過ごす日々は新しいことが多く今までにない楽しさがあった。
お互いの家に通って送り迎えが億劫になってきた頃には結婚に辿り着いていた。
『ここに居られなくなる。』
一度だけ素性に関して聞かれたが、人に話せるようなものではなく断った。
しかし、彼は「そっか」と笑って以降は聞いてこなかった。
こんな素性も分からない人間に微笑みかけ人生の伴侶に選ぶなんて不思議な人だ。
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