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2.
その白い蛇を助けた晩、おかしな夢を見た。
白い着物を着た女の人が、同じく白い着物を着た小さな男の子の手を引いて、どこからかやって来た。
見覚えのない二人だった。
「娘よ、お礼に参りました。」
女の人は、澄んだ鈴の音色のような声で言った。
「お礼?」
私にはこの二人を助けた記憶などなかった。
「ほほほ。昼間、小さな白い蛇を助けたでしょう?」
「え?ああ…あの、アルビノの?」
「あの蛇はこの子なのです。私の末の子、まだ、逃げる術さえ持たぬ幼子です。あのままでは、早晩、死んでしまっていたことでしょう。そうなれば、この子の魂は穢れ、禍つ神となりましょう。」
女の人は眉を寄せ、傍らの子どもの手をぎゅっと握りしめた。
「禍つ神?」
神様になるのであればいいような気がするけど、その口ぶりから、あまりいいことではないらしい。
「禍つ神は、災いを齎す恐ろしい神。厭われ、恐れられ、永遠に彷徨うしかない哀しい神。そのようなものに我が子をしたくはありません。ですが、私の力は強すぎる故、あの人の子らを傷つけるやも知れぬ。何か良い手立てはないものかと思うていたところへ、そなたが現われたのです。」
「姿かたちが変わっているからって、いじめられてもいいとは思わなかったから…まあ、私自体が変わりものって言われてるから、今さらアルビノのへびを助けたくらいで何も変わらないし。」
あだ名が一つ二つ増えるだけで、何も変わらないのだ。
母が忙しく働いているのも、二人きりの生活なのも、何一つ変わることはない。
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