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 「母上様、質実剛健とは、なんでございましょう?」  小さな蛇が大きな白い蛇に尋ねた。  「心も体も強いことですよ。」  母蛇が答えた。  「では、質素倹約とは、なんでございましょう?」  再び、小さな蛇が尋ねた。  「贅を凝らさず、慎ましやかに暮らすことですよ。」  また、母蛇が答えた。  「では、もう一つ、謹厳実直な人とは、どんな人でございましょう?」  もう一度、小さな蛇が尋ねた。  「正直で真面目な人のことですよ。」  母蛇は答えた。  「わたしはそのような人になれるでしょうか?」  小さな蛇がもぞもぞしながら、尋ねた。  「ほほほ…何を言うかと思えば…あの娘が気に入ったのですね?」  「はい。わたしが伴侶となりたい。」  「人の娘を嫁御に迎えるのならば、あの娘にはこちら側にいらしてもらわねばなりませぬ。ですが、母一人娘一人の二人暮らし、母は伴侶に恵まれず、この先の苦労もおそらくは前世の因果でしょうが、あの娘が母の全て、奪うことは許されません。」  母蛇は言った。  「ならば、わたしが人の側に参ります。人として、あの方にお仕えします。」  小さな蛇は体を伸ばして、母蛇に向かって言った。  「なんと…そなたは私の大切な子。いずれは、この母の後を継いで蛇神となる身であるのに…」  「母上様には、お子が100もいるではありませんか。それに人の一生は、瞬きほどのものと聞きました。あの方の一生に添い遂げても、母上様はまだまだ蛇神でおられるでしょう?」  「ほほほ…分かりました。あの娘の願いを聞き届けたのは、ほかならぬ私です。そなたが質実剛健、質素倹約、謹厳実直な人になれれば、あの娘のもとに遣わしましょう、辰巳よ。」  それから、10年後ー  『真堂辰巳』という青年が、彼女の前に現れたのは、また、別のお話。      
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