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「オラァッ!!大江、テメエ、これはどういう事だよ!!説明しろよ!!」
見ると、向こうのグループの中でも少々不良っぽい人が、兄の胸ぐらを掴んで引き上げていた。
ジャラジャラとアクセを付けてるわけではないが、口調と脱色した髪のせいで漫画に出てくるチンピラのように見える。
お陰で私達は初対面にも関わらず、他校の男子に庇われてガクブルしていたのだった。
「どういうって………俺だってわかんねえよ。俺がどうこうしてこんなになったわけじゃない。」
「ちっ!!使えねぇな!!!」
バシャンと大きな音を立てて兄を水に放り投げると、不良っぽい先輩はこちらをジロリと睨んできた。
「ぼ、僕達も、し、知りません!!」
「私も!!」
「まだ何も言ってねぇよ!!ちっ!!」
ジリジリと後退しながら、聞かれる前に叫ぶように答えると、わざとらしく兄に水を掛けるように足を蹴り出した。
「ブハッ!?止めろよ、スマホが壊れるだろう!?わわっ、ゲームデータが消える~!!」
お兄ちゃん………あんた、結構図太いね。すげぇや。
不良っぽい先輩と愚兄とがワアワアと騒いでいると、他の先輩達もやってきた。
中でもチャラチャラした感じの人が、厭らしい笑いを浮かべて、こちらを見ながら近づいてきた。
「いやぁ、俺達も急なことで混乱しててさー。てっきりこのオタクが何か変なことしたのかと(笑)」
「ごめんね~♪つーか、周りの奴等、ダサくない?どこの村人Aだっつーの、うける(笑)」
あっ!!あわわわわ!!あの人、ブラウス透けてる~!!ってことは、私達も!?ピギャァー!!?
急いで上着をかき寄せて透けてる部分を隠したら、チャラ男先輩は僅かに舌打ちして不機嫌そうな顔をした。
エッチなのダメ絶対!!私達が何歳だと思ってんの!?さいってー!!!
「おおおお!!稀人じゃあ!!二百年ぶりに稀人が現れたぞぉー!!」
陽キャグループは放っておいて、何とか噴水から出ようとジタバタしていると、大勢の人々がやって来て、一際豪華でズルズルした服のお爺さんが私達を指差してデカイ声で叫んだ。
周りでガチャガチャと金属音を鳴らしている鎧はどうやら本物で、映画の撮影かドッキリなら良いな~、と思ってた私の希望は崩れ去った。
お爺さんが言うには、数百年に一度くらいの割合で、何処からともなくこの泉に人が現れるとの事。
別に召喚術を使ってる訳ではなく、そのせいで元の場所に送り返せないそうだ。
ただし、どう考えても異文化や別の技術が進歩した世界から来ているという事は判明しているらしい。
「帰るためには、人知を越えた力が必要ですな。文献によると、大抵はこの地で骨を埋めるようじゃが、ダンジョンの秘宝を使って帰還したのではないかという話も有る。」
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