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お爺さんは王宮の元老院で魔法担当大臣をしているそうで、ダンジョンの秘宝の研究の第一人者でもあると言っていた。
稀人は新たな発展をもたらし、恵みを与えるという伝承から、とても丁寧に説明してくれた。
「ダンジョンを攻略するには、水晶で己の職業を選び、スキルを駆使して進むしかない。というのも、多くの場合アーティファクトというものは見付けた者に所有権が有るのじゃ。」
「他人には譲って貰えないってことか?」
「えぇ~、だッるぃ~。そんなのオタクが頑張って探せば良いじゃん。そしたら、うちらも帰れるしぃ~。」
兄がお爺さんの話を珍しく真面目な顔で聞いてる横で、ギャル二人はぎゃはははと下品な笑い声を上げて茶化している。
「いやいや攻略に全く参加してないと、そのアイテムに認識されない可能性も有るのじゃ。そもそもダンジョンから持ち出せぬモノなら、自分で行かねばならんじゃろう。」
確かに大きな備え付けの装置とかなら、動かせないよね?
「皆、五人から六人程度のグループで探索しておる。多すぎても少なすぎても危険だからじゃ。う~む、お主らはどうやら戦争とは無縁の世界の住人らしいの。」
「少な!?ウソでしょう!?たったそれだけの人数で進むの!?」
私は思わず声を上げて、お爺さんの方に身を乗り出した。
だって、私と苺花は運動部でシャキシャキ動けても、お兄ちゃんは帰宅部だし、璃子は運動音痴の上、気が弱い。
男の子二人は見たところ鈍臭くないようだけど、初対面で名前すら知らない。
パリピな先輩達とは組みたくないので、人数縛りはその一点でだけ有りがたいが、心細いのは確かだ。
「……………すみませんが、魔法大臣様。職業と詳しい情報を頂けますか?この六人で組むにしても手当たり次第に職業を試すわけにもいかない。」
「はぁ!?っんなの、お前。ガンガン出てくる敵をぶっ倒して進んでお宝取ったら終わりだろう!?」
俺等、職業とか勇者になったらマジ強じゃね!?
よゆーよゆー、いぇ~い♪
水玉スライムとか棒切れでオーケーじゃん♪
不良っぽい先輩がお兄ちゃんを鼻で嗤うと、チャラ男先輩とギャル子先輩達もケラケラ笑って盛り上がった。
「……ゲームじゃないんだよなぁ。百歩譲ってゲームの世界観にそっくりだとしても、いやもっとまずいか……」ブツブツ
「お兄ちゃん?」
さっきまでスマホの心配をしていたのに、お爺さんに話を聞き始めてからどんどんと兄が沈んでいった。
「なあ、伊勢崎。画面越しのゲームじゃなくて生身なんだぞ、俺達。虫ですら慣れてないのに楽観するのは早いんじゃ……」
「えぇ(笑)大江がビビってるだけっしょ。最初の敵なんて肩慣らしのチュートリアルじゃーん(笑)」
チャラ男先輩は伊勢崎さんというらしい。
うへ、どうでも良い情報が増えちゃった。
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