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魔王は、元聖女の首を見つめる。首枷はすでに取ってあるというのに、「首元がスース―して落ち着きません! お願いします! 私に首輪を!」と言ってドライアドの木をすこしもらい、首輪を自作したらしい。
「だって、8歳からずっとつけているんですのよ。突然外せと言われても困りますわ!」
聖女は、不当な扱いを受けているといわんばかりに魔王たちに告げる。魔王は嘆息した。聖女とは人間界を救う生き物らしい。魔王をここまで悩ませるのだから、目的は果たしているといえるかもしれない。
「そんなことより……ジン様は魔王様の側近ですわよね? 毎日城外から通っていらっしゃいますが、おうちはどのあたりに?」
「一ノ城郭の西に代々屋敷を構えていてな。ジンの一族は魔界でも一・二位を争う名家だから……」
そこまで言ってから、魔王は気づいた。
「い、今のは聞かなかったことにしてくれ! 俺がぺらぺらと部下の情報をしゃべったとなれば、ジンに封印される!」
「魔王様は……魔王様ですよね? 側近に封印されるほど弱くはないのでは?」
「ジンの一族は1000人、2000人を超すからな。みなが総出でかかってきたら俺でもひとたまりもないわ」
「でも、今まで反乱を起こしたことはないのですよね?」
「そりゃあ、めんどくさいから」
「……めんどくさい……?」
聖女は首をかしげる。魔王は深い嘆息をついて、わが身を憐れむように首をふった。
「魔王なんてものは民からは政治がなってないと怒られ、貴族からはその座を狙われ、人間からは恐れられて討伐対象。そんな立場はその辺の魔王様にでも押し付けとけ、ってのが ジン一家の言い分だ」
「つまり……魔王様は雑用なのですね!」
ルクシエルが笑顔で告げた。
どうもこのルクシエル、なにか大きな発見をすると無邪気に子どものようにわらう習性があるらしい。
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