#2 「世の中にふたつとして同じダイヤモンドはない」

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『アリサらしい』。 彼が自分に対して どういうイメージを持っているのか どう見てくれているのか…… 精密なカットを施されたダイヤモンドは 店内の照明を反射して 夜空の星の瞬きのように輝いている。 清廉なプラチナに守られた宝石の存在感が 『結婚』の実感を引き寄せる。 恋をした彼が私に振り向いて、 私を愛して、人生を共に歩むという。 その約束として贈られる美しい指輪が 自分の指にこんなにしっくりと来るなんて 想像もしていなかった。 ……そう思うと 口数が減る代わりに 彼を見つめる瞳が語りはじめる。 そんな彼女の綺羅星のような想いを いとおしく思ったと、ウッチーは言う。 高価な婚約指輪なんて、と はじめは戸惑っていたアリサちゃんに ウッチーは 『俺の気持ちを見える形にしたい。大切とか、愛してるとか……これからもずっと言葉で伝えていくけど、語らないものがあってもいいと思わないか?もしも喧嘩して嫌になって、お互いの言葉が届かない時が来ても、指輪を見て思い出して欲しいんだ。今日の気持ちを思い出せるものを、アリサに持っていてほしい』 と、正直な自分の気持ちで アリサちゃんの戸惑いを取り除いた。 自分の片想いだった恋を 愛に育ててくれた彼が、未来を誓って こんな言葉をくれるなんて。 音もなく……浸透するような 静かな感動に包まれたアリサちゃんは 結婚するんだ、という実感を 指輪越しにひしひしと感じたようだった。
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