夏と冬の選択

今年の夏

「今日は55度って、天気予報で言ってたよな。で、明日は未定って言ったぞ。おい、予報士が未定って何だよ。そんなのありかよ？」
「仕方ないじゃん、兄ちゃん。もう予測出来ない領域なんだよ」
　日中、遊びに出かける者はなく、陽が落ちるまでエアコンをつけた部屋にいるか、地下室がある家は地下に留まるしかない昨今。しかしそのエアコンもこの暑さで異常をきたすと、家に居られない子どもたちは灼けるような地面を飛び回るように走り抜け、水浴びをするために川へと足を運ぶ。
「頭痛いよ……」
「皮膚がヒリヒリする」

　力のない樹々は枯れ、葉は新芽の段階で葉焼けする。この暑さにも拘らず生き残りをみせる植物もあり、大きな花弁は毒々しい紫の血痕のようなまだら模様。虫は巨大化し、これが満足げな顔をして進化を続ける人類が作り上げた結果である。