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「天文部は部員も極端に少ないですし、例年そこまで高額を補助していないので、今の額になっています」
美加の返事に、燻は即座に「でも」と返す。
「人数が少ないからって企画も安上がりになるとは限らないと思いますけど。それに毎回同じ企画をやっているならともかく、前回と違う企画なのに例年の額面を参考にされても困るなあ」
少し静まる教室に、美加が細くフウッと息を吐くのが聞こえた。
「今年の企画はもちろん見ています。ただ、部員数や過去の支給実績なども見ながら総合的に判断していますので」
「ふうん。でも、貰いすぎている部活もあるように思えますね。ちょっと気になります」
騒然となる会議室。そのざわめきは、始めに案が配られたときよりも大きい。
一方、震源地である彼女は、プリントを手に持ったまま、美加に不敵な笑みを見せながら髪をかき上げた。
海賀燻は、変人である。
自分の拘りがあること、執着したことには、異常な情熱を持って首も体も突っ込んでいく。その好奇心と探究心、そして度胸と実行力が変人の域。
疑問や不満があれば徹底的に追いかけ、必要とあらば敵を煽り、戦闘状態を作り上げることも厭わない。目標を定めたらどこまでも飛んで行く、追跡ミサイル系女子。
「というわけで白鐘さん。私は、来週の調整会議で、怪しい部活を徹底的に攻めます。つきましては、万が一その部活の過ちが発覚した場合には然るべき対応をお願いしますね」
「……明確な証拠が出るとは思えませんが、善処します」
やれやれ、と言わんばかりに白鐘美加は額を手で押さえた。
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