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「君はさ。こうして都合の悪いことは書かないで、すぐに悲劇のヒロインぶるんだね」  ふと頭の中に、すっと降りてきた言葉。 「本当は優しい助言をしてくれた友達もいたのに、それはなかったことにして、悪い記憶ばかりわざわざ呼び起こして、それだけを書いて、自分だけが可哀そうです、なんて物言いをするんだね。僕は知ってるよ?君のこと。だって僕は君の神様だからね?」 「ひっ…!!!」  私は思わず声を上げた。これは幻聴か、それとも現実に聞こえている声なのか?低い男の声。どこか薄気味悪い、どんよりと曇ったような声。 「男性とご縁がない?過去にさ、君のこと好きになってくれた男性がいたのに、それもなかったことになっているのかな?」 「職場でも、確かによく注意はされているけどさ?褒められていることもあるよね?それもなかったことになっているのかな?」 「君は良かったことや楽しかったことをひた隠しにして、ただただ悲劇のヒロインぶって、同情を集めてちやほやされたい、なんて悪癖があるよね?それで辛い思いをした人がいることも、全部なかったことにされてるんだね?僕は悲しいよ……」 「いやっ!!!やめて!!!いやぁーーっ!!!」  私は耳に手を当てて、大声を上げる。しかし耳をふさいでも、そのどこのだれか分からない声は、容赦なく私の中に入って来る。 「僕は本当に君のことが好きだったのにさ。君は、“変な人に好かれて迷惑”なんて思いこんで、SNSで僕のことをブロックしたどころか、僕の名前を出さずとも、わざと誰なのか分かるように、僕の悪口を書いては同情票を集めたよね?僕は知ってるよ?」 「そうしてSNSで誰かの愚痴ばかり書いて、人間性を疑われるとすぐにIDを消して、また別のIDで別人となって、また誰かの愚痴を書いて…そんなことばかりしていたのも、知ってるよ?」 「僕はもう、君の中に存在できるようになったから、君のことはなんでも分かっちゃうよ?ね?」 「いや!!!いや!!!!やめてぇぇーーーーーーっ!!!!!!」
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