###26回目のクビ宣告###

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###26回目のクビ宣告###

明日汰(あすた)、お前絶対呪われてるぞ」  愛知県より岐阜市に程近い、端の方に位置する町、幽現町(ゆうげんちょう)。  そこのとあるコンビニで俺はアルバイトをしている。  そのコンビニで同期のバイトの男が深夜の品出し中にそんな事を言い出した。 「なに、急に」 「急じゃねえわ、マジで言ってる」  確かに俺はついてない。  子供の時から車に轢かれたり、通り魔に刺されたり。  酷い時は旅行先でテロに巻き込まれたりするけど呪われてるとは心外な。少し運が悪いだけだと思うんだけど。 「じゃなきゃこんな事になっとらんわ、何回も」 「こんなの良くあるけど」 「明日汰くん、今日限りでクビね」 「えぇーっ! そんなぁぁぁっ! なんでっすか!!」 「こんな事になってたらね、困るんだよ。うちも」 「お、お前ら! 何してる! さっさと金を詰めろ! これが見えねえのか!」  覆面をしたお洒落な黒服さんが店長の顔の前でナイフをちらつかせている。  だから何だという話ですけど。 「なんなんだ、お前ら! これが怖くねえのか!」 「馴れちゃったよな、明日汰のせいで」 「本当にね」 「酷い!」  泣き真似をして場を和ませようとすると、強盗さんが俺にナイフを向け。 「ふ、ふざけてねえでさっさと金詰めろ! 刺されたいのか!?」 「あーあ、明日汰にナイフ向けるなんてバカなやつ」 「なんだと!?」  俺の辞書にはこう書かれている。  やられる前にやれ...…と。  だから失礼します。 「俺をバカに...…!」 「せやあっ!」 「がはっ!」  余りにも隙だらけだったから胸の中心に掌底を当てると吹っ飛んでしまった。  どんだけ体幹が無いのだと思う。 「おっと」  ひゅんひゅん上から落ちてくるナイフをキャッチ。  それを倒れている強盗の近くの床に投げて刺した。  すると「うわあああ!」なんて叫びながら逃げていってしまった。  失礼な.…..。  人を化け物みたいに。 「助かったよ、明日汰くん」 「じゃあクビは無しで...………」 「それは別」 「…………くそぉ」  通算26回目のクビ宣告を受け、俺こと明日汰21歳はまたしても無職になってしまった。
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