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「やっぱり私達人間じゃあやかし相手では......」
私を縛り付ける大木に刺さるナイフから微振動を感じながらボソリと呟く。
それを聞いていたルーシェさんは静観していたが、ナイフを見つめながらゆっくりと語りだした。
「その昔。 貴女が生まれるよりも遥か彼方にフランスを中心としたデモンエクス、アメリカを柱としたデモン。 後に日本と呼ばれた地に住まう妖怪。そしてカクリヨ。 私達デモンエクスの故郷であるカクリヨを統治していた九尾の狐という、当時最強と言われた日本妖怪とのよつどもえの戦争がありました」
「あやかしの戦争? そんなの歴史には......」
「でしょうね。 あの出来事は遥か過去のこと。 当時の世界は私達デモンエクスに恐れをなして、後世に残さないように情報操作を施しました。 それが人間の歴史における解明できない歴史の一部。 書物なども残らず処分されましたから」
空白の歴史。
それは確かに耳にした事がある。
確か紀元前の話だった筈だ。
「あの時は私達デモンエクス、あやかしにとっての全盛期でした。 支え合える人間とは違い、戦いに生き、闘争に死ぬ。 仲間内でも常に殺し合う。 それが私達ですから。 その戦争で、私の率いるシルフィード軍。 東のスカーレット軍。 和の国のぬらりひょん連隊。 そして九尾の狐率いるカクリヨ大部隊がしのぎを削り合い多くの命が失われました」
この人は一体何歳なのだろう。
聞いてみたいが怖くて聞けない。
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