いつもの通り道で

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◇ 真美が巾着袋を拾い上げた道端から、数分歩いた場所に交番があった。 中にいた警察官に、落とし物を拾得した旨を真美が伝える。 「中身、なんだか確認してみましょうか」 そう言って、警察官が巾着袋を勢いよく開こうとするので、 「あのっ……大分、生地が擦り切れているので気をつけて開けた方が……」 と、ついつい真美は口を出す。 「すみません、つい力が入ってしまいまして……」 真美より遥かに年上であろう警官が、すまなそうな顔をしながら巾着を開くと、中からバチ型の椿の細工が施された簪が出てきた。 「では3ケ月間、落とし主が不明、もしくは落とし主が返還を希望しない場合、寺川さんがこの簪を所有する権利が発生しますので……」 「あ、はい。分かりました……落とし主の方が見つかるといいんですけど……」 真美は、そう言い残して交番を去った。 真美が交番を去ると、付喪神である簪と警官は二人きりになった。 先ほど警官と真美が『保管期間が……』などと言っていたのを付喪神は聞いていた。 付喪神は、持ち主の申し出がない限り、この何も娯楽がなさそうな交番で何日も過ごさねばならないことに気づき、また深く溜息をついた。
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