10/12
1270人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
 風呂場へ案内する。 「ここがトイレ、こっちが風呂ね」 「了解」  ユウがトイレに入る。  俺はトイレの向かいにある寝室のドアを開けた。ダブルベッドと、サイドテーブル。あとはクローゼットしかないシンプルな部屋だ。  クローゼットを開け、グレーのスウェットの上下を取り出す。下着用の引き出しを開けて、新品があることにホッとし、袋に入ったままのボクサーパンツを取り出した。  ユウがトイレから出る音がした。脱衣所のドアが開いて閉まる音。  しばらく待ち、ドアを開ける。脱衣所のカゴの中には、キチンと畳まれた服が置いてあった。半透明のドアの向こうでシャワーの音もする。  大丈夫そうだな。  スウェット上下と包装されたままのパンツと、箱に入ったままの歯ブラシも置いておく。棚からタオルを出して、着替えの横にセット。  これでよしと。  満足した俺は寝室へ入り、やっとスーツを脱ぐことにした。  部屋着に着替えていると、頭にタオルをかぶったユウが寝室をヒョコッと覗いた。 「お風呂ご馳走さまぁ」  頬はポッポとピンクだけど、出てくるスピードはかなり早い。 「ちゃんと湯に浸かったの?」 「うんうん。いいお湯でした」  そう言ってちょこんと頭を下げる。 「ちゃんと温まったのならいいけど」  どうしようか。疑いたくはないけど、風呂に入るのは無用心かもしれない。 そもそも俺は、人見知りではないけれど慎重な性格で、初対面の人間を部屋に上げるなんて今まで一度もしたことがない。  どうしてなのか。気づいたらこの状況。  でもそれを、どこかで楽しんでいる自分もいる。アルコールのせいだろうか? 「えっと……じゃあ俺も、風呂行ってくるから。テレビでも観て待っててくれる? あ、そうそう。ソファ倒してベッド作っておくし」 「うん、勝手にやってるから入ってきていいよ」 「お、おう」
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!